3月のあとりえ

春まだ浅い頃、実家で母と過ごす時間が僅かずつ長くなった。
馴染めなかった介護帰省という言葉もいつしかすんなり受け入れて、この頃は介護ではなく母と過ごす時間と捉えている。
そうね、天上に居られる神様がきっともうお決めになった猶予なのだから、優しい時間を少しでも多く作ろうと思う。
朝には母の好きな小花のセーターを選び着せ、美味しく食べられる食事を整え、
午後には愛読書のレース編みの本の頁をめくり、言葉の出にくくなったその傍らでゆっくり語り掛ける。
嬉しそうなまなざしが返ってくる。
わたしは今、かけがえのないものを、美しいものを母から貰っている。
たんまりと、たんまりと。


