9月のあとりえ
10数年前、思いもよらない大病を患う前まで、母は私の仕事を随分助けてくれていた。
編むということが、生きがいのように何十年も過ごしてきたのでしょう、その仕事は本当に美しかった。
母の鍵針編み、特にレースは、私には足元にも及ばない。何十枚のモチーフも寸分の違いない仕立てで送り届けてくれた。
父が、話し相手にならないから、母に仕事を頼まないでくれと私に言ってきたほど、集中を切らさず編んでくれたのだろう。
どんな仕事も、一つの事を、ずっと同じ気持ちを持って続けていくことは、そう優しい事ではないと思う。
根気と根性はどこかに接点がきっとある。諦めかけると後ろからそっと支えてくれるような。頑張れ、頑張れと。
新しいこのレースモチーフの作品を見せたら、母は、私も編みたいと言ってくれるかもしれない。
そのときは、お母さんなら今もきっとできるよと、にこにこして言ってあげたい。